ちょっとした休憩、そんなつもりだったのだろう。
だけど、その穏やかな陽気と彼自身の疲労がそれを許してはくれなかったらしい。
窓際の椅子に腰を掛け、少しだけ背を預けた窓枠へ、不意に体重が掛かったのが見て取れた。
そんなものには寄り掛かるくせに。
いつだって傍にいる仲間には
――― 。
新宿は軽い溜息を一つ付くと、窓際にもたれ掛かったままの池袋の元へと近付いた。
一見、外を見ているような体勢だが、実は違う。
何故なら、彼の瞳は閉ざされていたから。
暖かな陽気に誘われて、ほんの少しだけのつもりで閉じてしまったのだろう。
池袋はいつだって疲れているようなものだ。
本線という立場もさることながら、ただでさえ一人で仕事を背負い込みたがる。
新宿たちの新宿系統と違って、たった一人。
新しい仲間が増えることは決まっているが、それは決して順調な工程とも言えず。
恐らくはそれすらも、彼にとってみれば自分の責任であるかのように思っているのだろう。
新宿は音を立てないように、池袋と九十度の角度を保つように椅子を置いた。
そのまま腰を下ろすと、腕を組み、椅子に背を預ける。
背もたれの向こうにある窓枠には池袋が寄り掛かったままだ。
互いに違う方向を向きながら、でも、背中合わせの、すぐ近く。
その寝息さえ聞こえそうな程に。
――― 意識が無いときだけが、安らぐ時間だなんて。
思わず、溜息が零れた。
その新宿の気配を感じたのか、ふと池袋が身じろぎをしたのを感じ取る。
緩慢な動作で顔を上げたことで、自分がその意識を手放していたことに気付いたようだ。
眠るつもりなど無かった、のに。
そうとでも思ったのだろう。彼は自分自身に対して、批難めいた吐息を零す。
そして、いつの間にか自分の近くで座り込んでいる新宿へと声を掛けてきた。
「
――― 新宿? どうした、こんなところで……」
「休憩だ。少しぐらいいいだろ?」
両方の目を覆った前髪のせいで、池袋からは新宿の表情は半分しか解るまい。
のんびりとした調子で答えてやれば、池袋は新宿が自分と同じように眠気を覚えているのと判断したのだろう。
「じゃあ、少し寝ていけ」
そう言って立ち上がろうとするから。
「……そこにいろよ。せっかくの背もたれがいなくなっちゃ、寝心地が悪い」
その新宿の言葉に、池袋は一瞬行動を躊躇する。そのコートの袖を抓んで引き留めた。
先ほどは窓枠へ預けていた頭を、今度は椅子の背もたれ越しの彼の肩へと預ける。
不本意ながら、この身長差は枕にするにはなかなか良い高さだ。
戸惑いを消せないでいる池袋に構わず、目を瞑る。
やがて、新宿の規則正しい呼吸音につられたように、池袋は再び窓枠へと背を預けた。
そして、緩やかにその吐息が寝息へと変わっていく。
自分が彼に寄り掛かることで、彼が自分に寄り掛かってくれるなら。
溜息が混じりそうになる吐息を、新宿は意図的に抑えた。
窓の外から差し込む日差しは、少しだけ眩しくて、暖かくて。
だけど、彼が自分の傍で眠ってくれるなら、ここはそれ以上に暖かいから。
the END