ここは紙端国体劇場[裸・男]/青春様の二次創作を取り扱っております。
・・・→ 本文
――― その瞬間、西武池袋は反射的に目を閉じようとした。
いや、目を閉じるだけではなく、顔すら背けようとした。
その先の光景を、見たくなかったから。
見なくても、解る。
解らないはずが、無い。
だが目を閉じるよりも、顔を背けるよりも早く、池袋の視界は闇に包まれた。
漆黒の、全てを覆い隠すような闇。
だがその闇の中、池袋は確かに――― 。
人身事故発生の第一報を関係各所に送り終えたところで、池袋は微かに溜息を付いた。
朝のラッシュが一段落着いた時間ではあったが、どんな時間であろうと事故が好ましいはずがない。
――― それも、自らの終焉を望んだ誰かが起こした「事故」ともなれば。
居たたまれない感情を抑えつけるために、池袋はゆっくりと深呼吸を繰り返した。
トラブルが発生したところで、池袋が直接事故処理を行う訳ではない。
自分が行うべきは関係路線との調整と、何よりも乗客に応対すること。
池袋は気持ちを切り換え、駅員や担当者達と状況の確認と運転の再開予定を確認すると、改めて関係路線へ追加の連絡を行った。
淡々と事実だけを告げる連絡。
業務的なやりとりに、誰も余計な言葉を差し入れようとはしなかった。
池袋が必要以上に気に掛けられるのを好まないと知っているからこそ、彼らはそうやって気を使う。
――― そうやって気を使われていると知りながらも、自分は。
ふと気が付くと、池袋は両手を強く握りしめていた。
この類の事故に関して、以前より随分と落ち着いて行動出来るようになったつもりだが、不安が全く無いと言えば嘘になる。
事故が起きたからといって、いちいち動揺してなどいられないのに。
そう自分自身を叱咤した池袋の耳に、乗客達の不満と諦めのざわめきの中から軽い靴音が届いた。
「池袋!」
そう声を掛けながら駆け寄って来た西武有楽町は、しがみつくように池袋のコートの裾を握りしめる。
「ああ、済まない。迷惑を掛けてしまったな」
乗客の目があるため一瞬だけ迷ったものの、池袋はその小さな頭を撫でるように軽く手を置いた。
反射的に西武有楽町は頭を横に振ったが、コートを握りしめた手は離そうとしない。
日頃、勤務中に甘えることのない彼をこんな風に不安にさせてしまうのは、誰でもない池袋自身だ。
そっと西武有楽町の視線と合わせるように膝を折ると、池袋は静かに声を掛けた。
「私は大丈夫だから、困っているお客様を振替に誘導してくれないか?」
西武有楽町は池袋の真意を見抜こうとするかのように大きな瞳で見つめ返してきたが、やがてこくりと頷いて乗客対応をしている駅員たちの元へと向かっていった。
特に何を言うわけでも無いけれど、彼は彼なりに池袋を心配している。
それが解るからこそ、自分自身が情けなくもあるのだが。
「……思ったより、元気そうですね」
不意に、背後から声が掛かった。
その口調だけで、振り返るまでもなく誰なのか解る。
「お前も元気そうで何よりだな、副都心」
慇懃無礼とも聞こえる物言いをする副都心だが、実際のところ西武有楽町と大差ない。
見た目はどうであれ、まだまだ経験の少ない子供。
決定的に違うのは、課せられた責任の大きさと本人のプライドだろう。
「ええ。池袋さんのお陰で、元気がないと困っているお客様に対応しきれませんから」
にこりと笑みを浮かべながらそう正論を言われては、池袋としても黙り込むしかない。
その態度に満足したのか、副都心は軽く首を傾げながら言葉を継いだ。
「まあ、不幸中の幸いと申しますか、ラッシュは過ぎてますし、池袋さんの連絡が迅速だったお陰もあって大事にはならずに済みそうです。ご安心ください」
余裕のありそうな言葉に、池袋は微かに涌き上がる苛立ちを隠して視線を落とす。
迷惑を掛けているのは自分なのだから彼に怒るのは筋違い、なのだが。
不意に副都心の押さえた笑い声を聞いたような気がして、池袋は反射的に顔を上げた。
「……何だ?」
「いえ、変わられたな、と思いまして」
口元に浮かんだ笑みを片手で覆い隠しながら、副都心はそう微笑みかける。
「変わった? 何処がだ?」
その池袋の問いに顔を上げて何かを言い掛けるように口を開いたものの、副都心は一瞬の逡巡の後、話を逸らすように応じた。
「――― いえ、僕が言っても仕方が無いことです」
一体、何を言いたいのか。
反射的に追求しようとして、池袋は黙り込む。
業務に関係ないことならば、自分には関係ないはずだ。
――― なのに、自分から関わろうとするなんて。
「……いつまでもここにいると、サボるなって怒られますね」
副都心は話を切り替えるように、にっこりと笑って見せた。
池袋の戸惑いを察したからこそ、そういう態度を見せるのだろう。
いつの間に、そんな気遣いが出来るようになったのか。
まるで、人のことばかり気にする誰かに良く似て――― 。
ふと、池袋は顔を上げて周囲をくるりと見渡した。
「……何か、お探しですか?」
「いや、特に何も――― 」
特に意識したわけではない。
ただ、西武有楽町や副都心が顔を出したのと同じように、誰かが来るような気がしたから。
必要以上に構うなと言っても、いつだって池袋に関わってくる誰か。
人のことばかり気にする、誰かが。
「ああ、先輩なら顔を出すと怒られるって解ってるから来ないと思いますよ。そもそも、最初に連絡してきたときに池袋さんが言外に牽制してたじゃないですか。僕も怒られるかと思いながら来たんですけどね」
「……何故、奴を引き合いに?」
問い掛けもしないのに答えてきた副都心へ、池袋は少し警戒しながら問い返した。
「別に、他意はありません」
口元に浮かぶのは、副都心特有の意味ありげな笑み。
それに何らかの意図を感じずにはいられない。
「そんなに困った表情(かお)をしないで下さい」
「困った?」
それを言うなら、気分を害した、とでも表現するべきだろうに。
「……それはいつまでもお前が油を売ってるから――― 」
苦言を口にした池袋を留めるように、副都心は片手を上げた。
「正確には、僕を困らせる表情(かお)を、ですね」
思いも寄らぬ言葉に、池袋は眉を顰めて相手を見る。
「何故、私がお前を困らせねばならないんだ?」
いっそからかわれているのではないかと思うほどに不可解な態度を池袋へ示しながらも、副都心は一切の解答を示さない。
「では、今日一日頑張りましょう」
彼特有の曖昧な笑みを浮かべたまま、副都心は池袋へ背を向けて自分の持ち場へと戻っていった。
――― 結局、朝の事故以降、大きな問題も無く一日の業務を終えた。
変わった事と言えば、何かといえば互いに憎まれ口をたたき合う東武東上が大した用事もないのに顔を出してきたくらいだ。
特に言葉を交わすわけでもなく、ただ通りすがっただけの振りをして。
それが東上なりの気の使い方だと、池袋にも解っている。
西武の仲間達もそれは同様で、事故に関する連絡を行う以外はいつも通り。
ただ一つ、池袋にとって意外だったのは、有楽町が顔を出して来なかったことだ。
事故の一報を入れた以降、特に連絡もない。
勿論、最初に連絡を入れたときに池袋の方から心配無用と釘を刺しておいたのだが。
軽い吐息を付くと同時に肩を落とした自分に、ふと池袋は気付いた。
――― 何故、肩を落とす必要があるのか。
池袋は無意識の行動に眉を顰めると、気持ちを切り替えるように周囲を見渡す。
すでに終電は過ぎ、乗客どころか駅員の姿も消えたホーム。
いつの頃からか、こうやって構内を見回るのが池袋の日課となっていた。
業務としての見回りであることは事実だが、それ以外の意図がなかったとしたら嘘になる。
それは、自分が自分であるための確認。
自分に与えられた仕事を再確認するために。
望まれたままに、走る。
そのためだけに自分は、存在したから。
――― だけど、今は。
真っ直ぐに伸びる線路へ視線を向けた池袋は、不意にその人影に気が付いた。
長髪の若い女性が俯くようにして立っている。
自分のことしか考えられなかった頃の池袋のように、走る車両の無くなった線路を見つめて。
いくら照明を落としているとはいえ、こんな時間まで駅員に見咎められなかったのを不思議に思いながら、池袋は静かに声を掛けた。
「――― お客さま、本日の終電は終了致しましたが」
女性ははっとしたように顔を上げると、振り返って池袋へ頭を下げる。
「済みません」
今時にしては珍しい真っ直ぐに伸びた黒髪が、その仕草に呼応して揺れた。
何処か感じる愁いの気配は、その髪色のせいだろうか?
すでに駅構内に駅員達の姿は見えないが、追い立てることには抵抗がある。
「どうかなさいましたか? 何かお手伝い出来ることが――― 」
池袋の柔らかな言葉に、女性は微かに頭を横に振った。
「いえ、もう充分です」
呟くようにそう言うと、彼女は再び線路へと視線を落とす。
――― 充分?
その物言いに微かな違和感を覚えたものの、改めて問い詰めることも躊躇われる。
それにしても、業務を終えて構内を見回った駅員達に見咎められることなく、彼女はいつからこの場所でこうしていたのか。
怪訝さを隠しきれない視線に応じるように、女性は静かに池袋へと視線を向けた。
儚げに揺れるのは、悲しそうな光を宿した瞳。
初めて会ったはず、なのに。
その眼差しに見覚えがあるような気が、した。
それも、ごく最近――― 。
戸惑う池袋に、彼女は小さく微笑んだ。
「実は、あなたにお礼が言いたくて待っていたんです」
「礼? 私は何も……」
思わぬ言葉にそう返したが、女性はゆっくりと首を横に振る。
「いいえ。あなたはちゃんと私を見てくれたから。……ありがとう」
その口元に微笑みを浮かべながらも、彼女の眼差しは悲しげなまま。
確かに、自分は彼女を何処かで見ている。
だが、一体何処で?
そう記憶を手繰り寄せようとした瞬間、池袋の脳裏に今朝の断片的な光景が甦った。
――― ふらりと、走行中の車両へと倒れ込む人影。
ブレーキが軋む金属音が響くの中、緩やかに舞う黒髪。
その奥に見えるのは、縋り付くような悲しい瞳――― 。
それは今までにも幾度も繰り返された、望まざる光景。
己の人生に終止符を打つために、池袋を「利用」する人々は後を絶たない。
自分は人の命を奪うために、走っているわけではないのに。
「……」
何かを言おうとして、池袋は口を閉ざした。
記憶に残る光景に誤りがなければ、彼女は今朝の事故の原因となった本人のはずだ。
だが、彼女は池袋へと微笑み掛けている。
何処かで見たような、空虚な笑みを浮かべて。
――― それは、以前の自分の笑みに良く似ていていないだろうか。
「礼など……望みはしません。私は、誰かを傷つけるために走っているわけでは無いのです」
池袋が絞り出すように告げた言葉に、彼女ははっとしたように表情を曇らせた。
「あなたが感謝したとしても、私にとっては……」
「ごめんなさい」
池袋の言葉を遮って彼女は小さく謝罪の言葉を呟くと、一歩、歩み寄って真っ直ぐな眼差しを向ける。
「でも、ありがとう。あなたは私を憐れんでくれるのでしょう?」
――― それが彼女にとっての救いだ、と?
池袋が感じているのは、自分を命を絶つ道具として使われたことに対する憤りではない。
それは憐れみに似ていて。
まるで、昔の自分自身へ向ける感情のように。
彼女は、あの頃の自分と良く似ているのかも知れない。
自分の絶望しか見えず、他の誰かのことなど考えられなかった自分と。
「……相手に何があったとか、何に絶望したのだとか、解らないけど。オレ達だって悲しいってことぐらい、気付いてもらえたらいいな」
不意に、誰かの言葉が脳裏を過ぎった。
何を解ったようなことを言うのだ、とその時はそう思ったけれど。
――― 今なら解る。
誰かに救いを求めたとしても、簡単に救われるわけではない。
求めたのに救われないのだと嘆くのは、ただの身勝手だ。
何故なら、求められているのに救うことの出来ない相手も、本人の無力さを悔やむのだから。
池袋は俯いたまま、絞り出すように呟いた。
「――― 間違っている、あなたの選択は。……悲しいほどに」
何があったのか、知らない。
何に絶望したのか、知るはずがない。
だけど確かに、自分が悲しいから。
彼女を救う術を持たない自分が、悲しいから。
「自分のためにあなたを悲しませてしまった私を、それでも、あなたは悼んでくれるの?」
池袋がその言葉に顔を上げると、彼女は微かな微笑みと共に何かを呟いたように見えた。
声にならない言葉は、確かに。
ありがとう、と――― 。
ふと、近付いてくる靴音に気付いて、池袋は振り返った。
薄暗いホームでもはっきりと解る、明るい髪色。
忙しない早歩きだった靴音は、池袋が気付いたタイミングでそのスピードを上げる。
「池袋!」
「……駅構内を走るなと、いつも言ってるだろう」
そんな苦言など聞こえていないかのように、有楽町は小走りのまま池袋の元までやって来た。
「お前、大丈夫だって言うから昼間は遠慮してたけど、本当に大丈夫だったのか?」
そう勢い良く声を掛けて来る有楽町から池袋はすぐに視線を元に戻したが、すでに女性の姿は無い。
――― 彼女が亡霊の類だったとしても、自ら作り出した幻影だったとしても、驚きはしない。
気に掛かることは、ただ一つだけ。
自分は、彼女を救えたのだろうか。
「……池袋? どうした? 疲れてるなら早く帰って……」
何も答えない池袋へと、有楽町が気遣うように声を掛けて来る。
彼が心配するのは、池袋の昔からの悪癖を知っているからだ。
人身事故に絡む、悪癖。
池袋自身はもうそれを繰り返すまいと決めているが、その経緯を知る有楽町からの信頼は未だに得られないらしい。
「お前、ホントに大丈夫なのか?」
黙ったままの池袋に、躊躇いを含ませた手を腕へそっと添えながら、有楽町はそう声を掛ける。
いつもなら気にするなと、その手を払い除けることも出来ただろう。
だが、池袋は俯いて微かに頭を横に振るだけだった。
――― 思い出した。
そう、あの台詞を言ったのは有楽町だ。
仕事上関わりがあっても、話すらろくにしようとしなかった、あの頃。
池袋には自分と、自分が守るべき仲間しか見えていなかった。
他社の若い路線となど、必要最低限以上関わるつもりは無かった、のに。
たまたま人身事故にまつわる自分の悪癖を知った、ろくに事情も知らない彼は言ったのだ。
――― 自分たちだって、悲しいと言うことに気付いてもらえたらいいのに。
自分ですら、ろくに認識していなかった事故に対する感情。
それを、何も知らないはずの彼が。
あの時初めて、自分は有楽町という存在を認識したのかも知れない。
「池袋、大丈夫か?」
心配そうに問いかけながらも、有楽町の手はいつの間にか池袋の二の腕をしっかりと捕まえていた。
この手を振り払うことも、出来るはず。
だが。
「……有楽町」
「え?」
有楽町はぽつりと呼び掛けた池袋の声に反射的な返答を返した後、改めて驚いたように池袋を真正面から見て呟いた。
「……え?」
――― あの時、自分が何を言ったか覚えているか?
そう聞こうとして、止めた。
「いや、何でもない」
今になってやっと、あの言葉が届くなんて遅すぎるにも程がある。
苦笑じみた自嘲を浮かべた池袋は、不意に有楽町の様子に気付いて軽く首を傾げた。
何か言いたげなのだが、言葉にするのを躊躇うようにそわそわとしている。
その一方で、先ほどから掴んだままの池袋の腕を放す気配は全くない。
「有楽町?」
さすがに不審に思って声を掛けると、彼は落ち着きのない視線を向け、呟くようにぽつりと言った。
「……えっと、初めて、だよな?」
「何がだ?」
戸惑った様子を見せながらも、有楽町の口元がゆっくりと緩む。
その変化の理由が解らず眉を顰めて首を傾げた池袋へ、彼はゆっくり口を開いた。
「池袋は、いつもオレのことを貴様だとか、お前って呼ぶだろ? ……名前で呼んでくれたの、初めてだから」
「そう……だったか?」
そう言われれば確かに、名前を呼んでいたという明確な記憶はない。
仲間以外の路線に関わるつもりなど無かった自分には、他社の新人である有楽町を個別に認識する必要が無かったから。
必要以上に関わる必要など、無かったから。
――― 無かった、のに。
「特に名前を呼ばなくても、困ったことは無かったではないか」
思わず言い訳じみた答えを口にした池袋の戸惑いに気付いた様子もなく、有楽町は掴んだままの腕を自分の近くに引き、畳み掛けるように言葉を継いだ。
「でも、東上や丸ノ内は名前を呼んでいただろ?」
「奴らは昔からの顔見知りだ」
あの唯一無二の存在を失う前からの、仕事仲間。
鉄道業務上のライバルではあるが、確かに彼らは「仲間」だったのだ。
だが、自分は変わった。
自分に救いを与えた存在を失い、再びの闇に突き落とされた。
それ以降、自分は同じように光を失った「仲間」たち以外の関与を拒絶して――― 。
「じゃあ、副都心はどうなんだ?」
憮然とした表情を隠そうともせず、有楽町は食い下がる。
そう指摘されて、池袋は自分があの一番年若い路線を名前で呼んでいることに気が付いた。
自分が口にした法則から逸脱しているが、その理由はすぐに思い当たる。
「……ああ、あれはお前が悪い。ろくに仕事も出来ない子供を見た目に騙されて、大人と同じ扱いをしてたんだがらな。子供にはそれなりの教育をせねばならないだろう?」
思わず軽い笑みを浮かべた池袋へ、有楽町は不服そうに言葉を継いだ。
「だからって、お前が率先して関わるのもおかしくないか?」
「放っておいて、トラブルに巻き込まれたくもなかったからな。まあ、結局は巻き込まれたわけだが」
副都心開業直後の数々のトラブルには東上共々苦労させられたのも、今では苦笑混じりの記憶になりつつある。
「そうだとしても、お前が甘やかしてたのは事実で……」
全く引く気配を見せない有楽町に、池袋は軽く首を傾げた。
「お前は、一体何がそんなに気に入らないんだ?」
そもそも副都心の件に関しては、ちゃんと有楽町の指導が出来ていれば池袋が口を出す必要は無かった話だ。
勿論、池袋から有楽町へ忠告するという方法もあったが、当時の池袋は西武有楽町に対して負い目めいた思いが強く、それ故に仕事上彼の面倒をみていた有楽町に多少の苦手意識を持っていた。
だからこそ、有楽町より見た目はどうあれ未熟な副都心を相手にする方が気が楽だったのは事実だ。
――― なのに、あの頃から有楽町は、何かと自分へと関わり始めた。
不遇と称される池袋の境遇を外野から聞かされてしまえば、人のいい有楽町は池袋を気に掛けずにはいられないだろう。
そこに同情心だけでなく好奇心が含まれていたとしても、責める気にはなれない。
――― だけど。
望まずして自分の過去の記憶を掘り返してしまった池袋は、静かに有楽町から視線を逸らした。
「池袋はオレが何を望んでいるか解らない?」
「……解るわけがないだろう」
素っ気ない池袋の答えにも意気消沈せず、有楽町は真っ直ぐに視線を向けたまま言葉を継ぐ。
「簡単なことだよ。……オレの名前を呼んでくれない?」
「何を……」
池袋は思いも寄らなかった要望を告げられて咄嗟に有楽町を見返したが、すぐに視線を足元へと落として黙り込んだ。
――― 名を呼ぶ事など、別に意識せずともいいはず。
そう頭では解っているのに、思ったように口が動かない。
「もう一回、呼んでくれる?」
池袋の戸惑いには気付いているのか、有楽町は微かに笑みの気配を漂わせている。
妙に余裕のありそうなその態度が、池袋の苛立ちを煽った。
「……何故、そんなことにこだわるんだ、お前は」
「池袋は解らないの?」
何かを期待しているのは、解る。
だけど、それが何かなのかが解らない。
解らないことに苛立つのか、それとも。
期待に応えられないことに、苛立つのか。
答えを出せなかった池袋は、彼の手を静かに払って背を向けることしか出来なかった。
その行動が何を意味するのか、有楽町も悟ったのだろう。
やがて、ぽつりと言葉が紡がれる。
「……そうだよな、そんなことにこだわるオレが悪いな」
「――― っ、有……」
沈んだ調子の声に思わず振り返った池袋は、何処か満足そうな笑み浮かべた有楽町に待ち構えられていた。
どうやら、池袋の呵責を見越した芝居だったらしい。
「あ、っと、悪い! 今のはオレが悪いってば!」
さすがに憮然とした池袋を宥めようと伸ばした手を、有楽町は不意に途中で下ろした。
疑問に思って池袋が有楽町を見ると、先ほどとは異なる愁いを含んだ笑顔を向けられる。
「今のはごめん。謝るけど、ずっとオレだけ仲間はずれだったってこと、気付いてた?」
「何だ、それは。……さっきも言ったろう。私は西武の仲間以外の名前を呼ぶ必要がなかったんだ」
「昔からの顔見知りである東上、丸ノ内、銀座は別にして、だろ? あと、目が離せなかった子供の副都心」
そう付け足しながら、池袋の話を理解していたとばかりに有楽町は軽く頷いてみせるが、その口調はどこか重い。
「ずっとさ、気にはなっていたんだ。オレだけが疎まれているんじゃないかって」
「そんなことは――― 」
疎んじるも何も、そもそも池袋にはその意識がなかっただけのこと。
だが、有楽町は気にせずにはいられなかった、と言いたいようだ。
「うん。池袋はそう言うときには遠慮なしにちゃんと言うと思ってた。だから、お前がオレの名前だけを呼ばないのなら、それが特別だと思うことにしたんだ」
有楽町はそう言うと、さっと柔らかな笑みへ切り替えて池袋を見た。
「……自惚れるな。大した意味などない」
「大した意味がないなら、これからは呼んでくれるのか?」
意味など無い、はずなのに。
自分が彼の名を呼ぶ事に抵抗を覚えているのは、何故なのか。
その自問に答えることが出来ず、池袋は反射的に不機嫌に応じた。
「貴様など、『お前』で充分だ」
――― これでは、まるで子供の問答ではないか。
自分自身に不服を覚えながらも何処か嬉しそうに笑う有楽町に気付き、池袋は不意に肩の力が抜けた。
「……有楽町」
するりと抵抗もなく出てきた呼び掛けに、今度は有楽町の方が驚いたようだ。
「え、何?」
笑みを浮かべつつも驚くという複雑な表情を浮かべた有楽町へ、池袋は静かに言葉を継ぐ。
「お前も他の奴らと同じだ。特別なんかではない。共に仕事をする『仲間』だ。私の仕事の足を引っ張るなら容赦はしないぞ」
「――― ああ。勿論」
軽い調子でそう切り返しはしたものの、彼の浮かべる笑みが嬉しそうだったから。
ずっと危うげな自分に関わってくれた、仲間たち。
それは、会社の括りだけではなくて。
共に同じ仕事をするという、仲間。
なのに、そんな彼らへ心を閉ざしてきたのは、自分。
そんな自分へ手を差し出してきたのは、彼。
他の誰もが、自分へと手を差し出すことを諦めていたのに。
拒絶されても、それでも決して諦めずに。
だからこそ、自分はこうして顔を上げることが出来たのだろうか。
「有楽町」
もう一度、彼の名を呼んだ。
「今まで、いろいろ迷惑を掛けた。……済まなかった」
池袋からの思わぬ謝罪の言葉に、有楽町は驚いた様子で首を横に振った。
「え、謝られることなんて何も無いよ。オレがお前をあのままにしておきたくなかっただけで――― 」
――― そう、自分が彼に言うべき言葉は謝罪ではない。
それは先ほどの「彼女」が、自分に与えた言葉と同じ。
「解ってる。だから――― ありがとう」
――― ちゃんと、自分を見てくれて。
自分ですら諦めていた自分を、見てくれて。
有楽町へ真っ直ぐな視線を向けながら、池袋は笑って見せた。
――― 上手く、笑えただろうか?
いや、目を閉じるだけではなく、顔すら背けようとした。
その先の光景を、見たくなかったから。
見なくても、解る。
解らないはずが、無い。
だが目を閉じるよりも、顔を背けるよりも早く、池袋の視界は闇に包まれた。
漆黒の、全てを覆い隠すような闇。
だがその闇の中、池袋は確かに――― 。
人身事故発生の第一報を関係各所に送り終えたところで、池袋は微かに溜息を付いた。
朝のラッシュが一段落着いた時間ではあったが、どんな時間であろうと事故が好ましいはずがない。
――― それも、自らの終焉を望んだ誰かが起こした「事故」ともなれば。
居たたまれない感情を抑えつけるために、池袋はゆっくりと深呼吸を繰り返した。
トラブルが発生したところで、池袋が直接事故処理を行う訳ではない。
自分が行うべきは関係路線との調整と、何よりも乗客に応対すること。
池袋は気持ちを切り換え、駅員や担当者達と状況の確認と運転の再開予定を確認すると、改めて関係路線へ追加の連絡を行った。
淡々と事実だけを告げる連絡。
業務的なやりとりに、誰も余計な言葉を差し入れようとはしなかった。
池袋が必要以上に気に掛けられるのを好まないと知っているからこそ、彼らはそうやって気を使う。
――― そうやって気を使われていると知りながらも、自分は。
ふと気が付くと、池袋は両手を強く握りしめていた。
この類の事故に関して、以前より随分と落ち着いて行動出来るようになったつもりだが、不安が全く無いと言えば嘘になる。
事故が起きたからといって、いちいち動揺してなどいられないのに。
そう自分自身を叱咤した池袋の耳に、乗客達の不満と諦めのざわめきの中から軽い靴音が届いた。
「池袋!」
そう声を掛けながら駆け寄って来た西武有楽町は、しがみつくように池袋のコートの裾を握りしめる。
「ああ、済まない。迷惑を掛けてしまったな」
乗客の目があるため一瞬だけ迷ったものの、池袋はその小さな頭を撫でるように軽く手を置いた。
反射的に西武有楽町は頭を横に振ったが、コートを握りしめた手は離そうとしない。
日頃、勤務中に甘えることのない彼をこんな風に不安にさせてしまうのは、誰でもない池袋自身だ。
そっと西武有楽町の視線と合わせるように膝を折ると、池袋は静かに声を掛けた。
「私は大丈夫だから、困っているお客様を振替に誘導してくれないか?」
西武有楽町は池袋の真意を見抜こうとするかのように大きな瞳で見つめ返してきたが、やがてこくりと頷いて乗客対応をしている駅員たちの元へと向かっていった。
特に何を言うわけでも無いけれど、彼は彼なりに池袋を心配している。
それが解るからこそ、自分自身が情けなくもあるのだが。
「……思ったより、元気そうですね」
不意に、背後から声が掛かった。
その口調だけで、振り返るまでもなく誰なのか解る。
「お前も元気そうで何よりだな、副都心」
慇懃無礼とも聞こえる物言いをする副都心だが、実際のところ西武有楽町と大差ない。
見た目はどうであれ、まだまだ経験の少ない子供。
決定的に違うのは、課せられた責任の大きさと本人のプライドだろう。
「ええ。池袋さんのお陰で、元気がないと困っているお客様に対応しきれませんから」
にこりと笑みを浮かべながらそう正論を言われては、池袋としても黙り込むしかない。
その態度に満足したのか、副都心は軽く首を傾げながら言葉を継いだ。
「まあ、不幸中の幸いと申しますか、ラッシュは過ぎてますし、池袋さんの連絡が迅速だったお陰もあって大事にはならずに済みそうです。ご安心ください」
余裕のありそうな言葉に、池袋は微かに涌き上がる苛立ちを隠して視線を落とす。
迷惑を掛けているのは自分なのだから彼に怒るのは筋違い、なのだが。
不意に副都心の押さえた笑い声を聞いたような気がして、池袋は反射的に顔を上げた。
「……何だ?」
「いえ、変わられたな、と思いまして」
口元に浮かんだ笑みを片手で覆い隠しながら、副都心はそう微笑みかける。
「変わった? 何処がだ?」
その池袋の問いに顔を上げて何かを言い掛けるように口を開いたものの、副都心は一瞬の逡巡の後、話を逸らすように応じた。
「――― いえ、僕が言っても仕方が無いことです」
一体、何を言いたいのか。
反射的に追求しようとして、池袋は黙り込む。
業務に関係ないことならば、自分には関係ないはずだ。
――― なのに、自分から関わろうとするなんて。
「……いつまでもここにいると、サボるなって怒られますね」
副都心は話を切り替えるように、にっこりと笑って見せた。
池袋の戸惑いを察したからこそ、そういう態度を見せるのだろう。
いつの間に、そんな気遣いが出来るようになったのか。
まるで、人のことばかり気にする誰かに良く似て――― 。
ふと、池袋は顔を上げて周囲をくるりと見渡した。
「……何か、お探しですか?」
「いや、特に何も――― 」
特に意識したわけではない。
ただ、西武有楽町や副都心が顔を出したのと同じように、誰かが来るような気がしたから。
必要以上に構うなと言っても、いつだって池袋に関わってくる誰か。
人のことばかり気にする、誰かが。
「ああ、先輩なら顔を出すと怒られるって解ってるから来ないと思いますよ。そもそも、最初に連絡してきたときに池袋さんが言外に牽制してたじゃないですか。僕も怒られるかと思いながら来たんですけどね」
「……何故、奴を引き合いに?」
問い掛けもしないのに答えてきた副都心へ、池袋は少し警戒しながら問い返した。
「別に、他意はありません」
口元に浮かぶのは、副都心特有の意味ありげな笑み。
それに何らかの意図を感じずにはいられない。
「そんなに困った表情(かお)をしないで下さい」
「困った?」
それを言うなら、気分を害した、とでも表現するべきだろうに。
「……それはいつまでもお前が油を売ってるから――― 」
苦言を口にした池袋を留めるように、副都心は片手を上げた。
「正確には、僕を困らせる表情(かお)を、ですね」
思いも寄らぬ言葉に、池袋は眉を顰めて相手を見る。
「何故、私がお前を困らせねばならないんだ?」
いっそからかわれているのではないかと思うほどに不可解な態度を池袋へ示しながらも、副都心は一切の解答を示さない。
「では、今日一日頑張りましょう」
彼特有の曖昧な笑みを浮かべたまま、副都心は池袋へ背を向けて自分の持ち場へと戻っていった。
――― 結局、朝の事故以降、大きな問題も無く一日の業務を終えた。
変わった事と言えば、何かといえば互いに憎まれ口をたたき合う東武東上が大した用事もないのに顔を出してきたくらいだ。
特に言葉を交わすわけでもなく、ただ通りすがっただけの振りをして。
それが東上なりの気の使い方だと、池袋にも解っている。
西武の仲間達もそれは同様で、事故に関する連絡を行う以外はいつも通り。
ただ一つ、池袋にとって意外だったのは、有楽町が顔を出して来なかったことだ。
事故の一報を入れた以降、特に連絡もない。
勿論、最初に連絡を入れたときに池袋の方から心配無用と釘を刺しておいたのだが。
軽い吐息を付くと同時に肩を落とした自分に、ふと池袋は気付いた。
――― 何故、肩を落とす必要があるのか。
池袋は無意識の行動に眉を顰めると、気持ちを切り替えるように周囲を見渡す。
すでに終電は過ぎ、乗客どころか駅員の姿も消えたホーム。
いつの頃からか、こうやって構内を見回るのが池袋の日課となっていた。
業務としての見回りであることは事実だが、それ以外の意図がなかったとしたら嘘になる。
それは、自分が自分であるための確認。
自分に与えられた仕事を再確認するために。
望まれたままに、走る。
そのためだけに自分は、存在したから。
――― だけど、今は。
真っ直ぐに伸びる線路へ視線を向けた池袋は、不意にその人影に気が付いた。
長髪の若い女性が俯くようにして立っている。
自分のことしか考えられなかった頃の池袋のように、走る車両の無くなった線路を見つめて。
いくら照明を落としているとはいえ、こんな時間まで駅員に見咎められなかったのを不思議に思いながら、池袋は静かに声を掛けた。
「――― お客さま、本日の終電は終了致しましたが」
女性ははっとしたように顔を上げると、振り返って池袋へ頭を下げる。
「済みません」
今時にしては珍しい真っ直ぐに伸びた黒髪が、その仕草に呼応して揺れた。
何処か感じる愁いの気配は、その髪色のせいだろうか?
すでに駅構内に駅員達の姿は見えないが、追い立てることには抵抗がある。
「どうかなさいましたか? 何かお手伝い出来ることが――― 」
池袋の柔らかな言葉に、女性は微かに頭を横に振った。
「いえ、もう充分です」
呟くようにそう言うと、彼女は再び線路へと視線を落とす。
――― 充分?
その物言いに微かな違和感を覚えたものの、改めて問い詰めることも躊躇われる。
それにしても、業務を終えて構内を見回った駅員達に見咎められることなく、彼女はいつからこの場所でこうしていたのか。
怪訝さを隠しきれない視線に応じるように、女性は静かに池袋へと視線を向けた。
儚げに揺れるのは、悲しそうな光を宿した瞳。
初めて会ったはず、なのに。
その眼差しに見覚えがあるような気が、した。
それも、ごく最近――― 。
戸惑う池袋に、彼女は小さく微笑んだ。
「実は、あなたにお礼が言いたくて待っていたんです」
「礼? 私は何も……」
思わぬ言葉にそう返したが、女性はゆっくりと首を横に振る。
「いいえ。あなたはちゃんと私を見てくれたから。……ありがとう」
その口元に微笑みを浮かべながらも、彼女の眼差しは悲しげなまま。
確かに、自分は彼女を何処かで見ている。
だが、一体何処で?
そう記憶を手繰り寄せようとした瞬間、池袋の脳裏に今朝の断片的な光景が甦った。
――― ふらりと、走行中の車両へと倒れ込む人影。
ブレーキが軋む金属音が響くの中、緩やかに舞う黒髪。
その奥に見えるのは、縋り付くような悲しい瞳――― 。
それは今までにも幾度も繰り返された、望まざる光景。
己の人生に終止符を打つために、池袋を「利用」する人々は後を絶たない。
自分は人の命を奪うために、走っているわけではないのに。
「……」
何かを言おうとして、池袋は口を閉ざした。
記憶に残る光景に誤りがなければ、彼女は今朝の事故の原因となった本人のはずだ。
だが、彼女は池袋へと微笑み掛けている。
何処かで見たような、空虚な笑みを浮かべて。
――― それは、以前の自分の笑みに良く似ていていないだろうか。
「礼など……望みはしません。私は、誰かを傷つけるために走っているわけでは無いのです」
池袋が絞り出すように告げた言葉に、彼女ははっとしたように表情を曇らせた。
「あなたが感謝したとしても、私にとっては……」
「ごめんなさい」
池袋の言葉を遮って彼女は小さく謝罪の言葉を呟くと、一歩、歩み寄って真っ直ぐな眼差しを向ける。
「でも、ありがとう。あなたは私を憐れんでくれるのでしょう?」
――― それが彼女にとっての救いだ、と?
池袋が感じているのは、自分を命を絶つ道具として使われたことに対する憤りではない。
それは憐れみに似ていて。
まるで、昔の自分自身へ向ける感情のように。
彼女は、あの頃の自分と良く似ているのかも知れない。
自分の絶望しか見えず、他の誰かのことなど考えられなかった自分と。
「……相手に何があったとか、何に絶望したのだとか、解らないけど。オレ達だって悲しいってことぐらい、気付いてもらえたらいいな」
不意に、誰かの言葉が脳裏を過ぎった。
何を解ったようなことを言うのだ、とその時はそう思ったけれど。
――― 今なら解る。
誰かに救いを求めたとしても、簡単に救われるわけではない。
求めたのに救われないのだと嘆くのは、ただの身勝手だ。
何故なら、求められているのに救うことの出来ない相手も、本人の無力さを悔やむのだから。
池袋は俯いたまま、絞り出すように呟いた。
「――― 間違っている、あなたの選択は。……悲しいほどに」
何があったのか、知らない。
何に絶望したのか、知るはずがない。
だけど確かに、自分が悲しいから。
彼女を救う術を持たない自分が、悲しいから。
「自分のためにあなたを悲しませてしまった私を、それでも、あなたは悼んでくれるの?」
池袋がその言葉に顔を上げると、彼女は微かな微笑みと共に何かを呟いたように見えた。
声にならない言葉は、確かに。
ありがとう、と――― 。
ふと、近付いてくる靴音に気付いて、池袋は振り返った。
薄暗いホームでもはっきりと解る、明るい髪色。
忙しない早歩きだった靴音は、池袋が気付いたタイミングでそのスピードを上げる。
「池袋!」
「……駅構内を走るなと、いつも言ってるだろう」
そんな苦言など聞こえていないかのように、有楽町は小走りのまま池袋の元までやって来た。
「お前、大丈夫だって言うから昼間は遠慮してたけど、本当に大丈夫だったのか?」
そう勢い良く声を掛けて来る有楽町から池袋はすぐに視線を元に戻したが、すでに女性の姿は無い。
――― 彼女が亡霊の類だったとしても、自ら作り出した幻影だったとしても、驚きはしない。
気に掛かることは、ただ一つだけ。
自分は、彼女を救えたのだろうか。
「……池袋? どうした? 疲れてるなら早く帰って……」
何も答えない池袋へと、有楽町が気遣うように声を掛けて来る。
彼が心配するのは、池袋の昔からの悪癖を知っているからだ。
人身事故に絡む、悪癖。
池袋自身はもうそれを繰り返すまいと決めているが、その経緯を知る有楽町からの信頼は未だに得られないらしい。
「お前、ホントに大丈夫なのか?」
黙ったままの池袋に、躊躇いを含ませた手を腕へそっと添えながら、有楽町はそう声を掛ける。
いつもなら気にするなと、その手を払い除けることも出来ただろう。
だが、池袋は俯いて微かに頭を横に振るだけだった。
――― 思い出した。
そう、あの台詞を言ったのは有楽町だ。
仕事上関わりがあっても、話すらろくにしようとしなかった、あの頃。
池袋には自分と、自分が守るべき仲間しか見えていなかった。
他社の若い路線となど、必要最低限以上関わるつもりは無かった、のに。
たまたま人身事故にまつわる自分の悪癖を知った、ろくに事情も知らない彼は言ったのだ。
――― 自分たちだって、悲しいと言うことに気付いてもらえたらいいのに。
自分ですら、ろくに認識していなかった事故に対する感情。
それを、何も知らないはずの彼が。
あの時初めて、自分は有楽町という存在を認識したのかも知れない。
「池袋、大丈夫か?」
心配そうに問いかけながらも、有楽町の手はいつの間にか池袋の二の腕をしっかりと捕まえていた。
この手を振り払うことも、出来るはず。
だが。
「……有楽町」
「え?」
有楽町はぽつりと呼び掛けた池袋の声に反射的な返答を返した後、改めて驚いたように池袋を真正面から見て呟いた。
「……え?」
――― あの時、自分が何を言ったか覚えているか?
そう聞こうとして、止めた。
「いや、何でもない」
今になってやっと、あの言葉が届くなんて遅すぎるにも程がある。
苦笑じみた自嘲を浮かべた池袋は、不意に有楽町の様子に気付いて軽く首を傾げた。
何か言いたげなのだが、言葉にするのを躊躇うようにそわそわとしている。
その一方で、先ほどから掴んだままの池袋の腕を放す気配は全くない。
「有楽町?」
さすがに不審に思って声を掛けると、彼は落ち着きのない視線を向け、呟くようにぽつりと言った。
「……えっと、初めて、だよな?」
「何がだ?」
戸惑った様子を見せながらも、有楽町の口元がゆっくりと緩む。
その変化の理由が解らず眉を顰めて首を傾げた池袋へ、彼はゆっくり口を開いた。
「池袋は、いつもオレのことを貴様だとか、お前って呼ぶだろ? ……名前で呼んでくれたの、初めてだから」
「そう……だったか?」
そう言われれば確かに、名前を呼んでいたという明確な記憶はない。
仲間以外の路線に関わるつもりなど無かった自分には、他社の新人である有楽町を個別に認識する必要が無かったから。
必要以上に関わる必要など、無かったから。
――― 無かった、のに。
「特に名前を呼ばなくても、困ったことは無かったではないか」
思わず言い訳じみた答えを口にした池袋の戸惑いに気付いた様子もなく、有楽町は掴んだままの腕を自分の近くに引き、畳み掛けるように言葉を継いだ。
「でも、東上や丸ノ内は名前を呼んでいただろ?」
「奴らは昔からの顔見知りだ」
あの唯一無二の存在を失う前からの、仕事仲間。
鉄道業務上のライバルではあるが、確かに彼らは「仲間」だったのだ。
だが、自分は変わった。
自分に救いを与えた存在を失い、再びの闇に突き落とされた。
それ以降、自分は同じように光を失った「仲間」たち以外の関与を拒絶して――― 。
「じゃあ、副都心はどうなんだ?」
憮然とした表情を隠そうともせず、有楽町は食い下がる。
そう指摘されて、池袋は自分があの一番年若い路線を名前で呼んでいることに気が付いた。
自分が口にした法則から逸脱しているが、その理由はすぐに思い当たる。
「……ああ、あれはお前が悪い。ろくに仕事も出来ない子供を見た目に騙されて、大人と同じ扱いをしてたんだがらな。子供にはそれなりの教育をせねばならないだろう?」
思わず軽い笑みを浮かべた池袋へ、有楽町は不服そうに言葉を継いだ。
「だからって、お前が率先して関わるのもおかしくないか?」
「放っておいて、トラブルに巻き込まれたくもなかったからな。まあ、結局は巻き込まれたわけだが」
副都心開業直後の数々のトラブルには東上共々苦労させられたのも、今では苦笑混じりの記憶になりつつある。
「そうだとしても、お前が甘やかしてたのは事実で……」
全く引く気配を見せない有楽町に、池袋は軽く首を傾げた。
「お前は、一体何がそんなに気に入らないんだ?」
そもそも副都心の件に関しては、ちゃんと有楽町の指導が出来ていれば池袋が口を出す必要は無かった話だ。
勿論、池袋から有楽町へ忠告するという方法もあったが、当時の池袋は西武有楽町に対して負い目めいた思いが強く、それ故に仕事上彼の面倒をみていた有楽町に多少の苦手意識を持っていた。
だからこそ、有楽町より見た目はどうあれ未熟な副都心を相手にする方が気が楽だったのは事実だ。
――― なのに、あの頃から有楽町は、何かと自分へと関わり始めた。
不遇と称される池袋の境遇を外野から聞かされてしまえば、人のいい有楽町は池袋を気に掛けずにはいられないだろう。
そこに同情心だけでなく好奇心が含まれていたとしても、責める気にはなれない。
――― だけど。
望まずして自分の過去の記憶を掘り返してしまった池袋は、静かに有楽町から視線を逸らした。
「池袋はオレが何を望んでいるか解らない?」
「……解るわけがないだろう」
素っ気ない池袋の答えにも意気消沈せず、有楽町は真っ直ぐに視線を向けたまま言葉を継ぐ。
「簡単なことだよ。……オレの名前を呼んでくれない?」
「何を……」
池袋は思いも寄らなかった要望を告げられて咄嗟に有楽町を見返したが、すぐに視線を足元へと落として黙り込んだ。
――― 名を呼ぶ事など、別に意識せずともいいはず。
そう頭では解っているのに、思ったように口が動かない。
「もう一回、呼んでくれる?」
池袋の戸惑いには気付いているのか、有楽町は微かに笑みの気配を漂わせている。
妙に余裕のありそうなその態度が、池袋の苛立ちを煽った。
「……何故、そんなことにこだわるんだ、お前は」
「池袋は解らないの?」
何かを期待しているのは、解る。
だけど、それが何かなのかが解らない。
解らないことに苛立つのか、それとも。
期待に応えられないことに、苛立つのか。
答えを出せなかった池袋は、彼の手を静かに払って背を向けることしか出来なかった。
その行動が何を意味するのか、有楽町も悟ったのだろう。
やがて、ぽつりと言葉が紡がれる。
「……そうだよな、そんなことにこだわるオレが悪いな」
「――― っ、有……」
沈んだ調子の声に思わず振り返った池袋は、何処か満足そうな笑み浮かべた有楽町に待ち構えられていた。
どうやら、池袋の呵責を見越した芝居だったらしい。
「あ、っと、悪い! 今のはオレが悪いってば!」
さすがに憮然とした池袋を宥めようと伸ばした手を、有楽町は不意に途中で下ろした。
疑問に思って池袋が有楽町を見ると、先ほどとは異なる愁いを含んだ笑顔を向けられる。
「今のはごめん。謝るけど、ずっとオレだけ仲間はずれだったってこと、気付いてた?」
「何だ、それは。……さっきも言ったろう。私は西武の仲間以外の名前を呼ぶ必要がなかったんだ」
「昔からの顔見知りである東上、丸ノ内、銀座は別にして、だろ? あと、目が離せなかった子供の副都心」
そう付け足しながら、池袋の話を理解していたとばかりに有楽町は軽く頷いてみせるが、その口調はどこか重い。
「ずっとさ、気にはなっていたんだ。オレだけが疎まれているんじゃないかって」
「そんなことは――― 」
疎んじるも何も、そもそも池袋にはその意識がなかっただけのこと。
だが、有楽町は気にせずにはいられなかった、と言いたいようだ。
「うん。池袋はそう言うときには遠慮なしにちゃんと言うと思ってた。だから、お前がオレの名前だけを呼ばないのなら、それが特別だと思うことにしたんだ」
有楽町はそう言うと、さっと柔らかな笑みへ切り替えて池袋を見た。
「……自惚れるな。大した意味などない」
「大した意味がないなら、これからは呼んでくれるのか?」
意味など無い、はずなのに。
自分が彼の名を呼ぶ事に抵抗を覚えているのは、何故なのか。
その自問に答えることが出来ず、池袋は反射的に不機嫌に応じた。
「貴様など、『お前』で充分だ」
――― これでは、まるで子供の問答ではないか。
自分自身に不服を覚えながらも何処か嬉しそうに笑う有楽町に気付き、池袋は不意に肩の力が抜けた。
「……有楽町」
するりと抵抗もなく出てきた呼び掛けに、今度は有楽町の方が驚いたようだ。
「え、何?」
笑みを浮かべつつも驚くという複雑な表情を浮かべた有楽町へ、池袋は静かに言葉を継ぐ。
「お前も他の奴らと同じだ。特別なんかではない。共に仕事をする『仲間』だ。私の仕事の足を引っ張るなら容赦はしないぞ」
「――― ああ。勿論」
軽い調子でそう切り返しはしたものの、彼の浮かべる笑みが嬉しそうだったから。
ずっと危うげな自分に関わってくれた、仲間たち。
それは、会社の括りだけではなくて。
共に同じ仕事をするという、仲間。
なのに、そんな彼らへ心を閉ざしてきたのは、自分。
そんな自分へ手を差し出してきたのは、彼。
他の誰もが、自分へと手を差し出すことを諦めていたのに。
拒絶されても、それでも決して諦めずに。
だからこそ、自分はこうして顔を上げることが出来たのだろうか。
「有楽町」
もう一度、彼の名を呼んだ。
「今まで、いろいろ迷惑を掛けた。……済まなかった」
池袋からの思わぬ謝罪の言葉に、有楽町は驚いた様子で首を横に振った。
「え、謝られることなんて何も無いよ。オレがお前をあのままにしておきたくなかっただけで――― 」
――― そう、自分が彼に言うべき言葉は謝罪ではない。
それは先ほどの「彼女」が、自分に与えた言葉と同じ。
「解ってる。だから――― ありがとう」
――― ちゃんと、自分を見てくれて。
自分ですら諦めていた自分を、見てくれて。
有楽町へ真っ直ぐな視線を向けながら、池袋は笑って見せた。
――― 上手く、笑えただろうか?
the END
☆
The Last up_date 2012.09
The Last up_date 2012.09
ども、葵です。
お立ち寄りありがとうございます。
半分以上閉店状態なのに覗いてくださっていると言うことは、恐らく、長い間、私の作品に付き合ってくださった方々だと思います。
本当にありがとうございます。
そんな皆様の、ご意見をお聞かせください。
以前から書くよ!って言ってる「最終話」ですが、実は目処が付いたのはいいものの、ちょっとした1冊の本になるぐらいの分量になってまして。
どうも、Web公開する分量にしてはキツイかな、という感じです。
とはいえ、個人での鉄道イベントの参加は終了となっておりますので、どうしたものかと悩んでおります。
よろしければ、拍手を利用した簡易アンケートにご協力いただけると幸いです。
お立ち寄りありがとうございます。
半分以上閉店状態なのに覗いてくださっていると言うことは、恐らく、長い間、私の作品に付き合ってくださった方々だと思います。
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以前から書くよ!って言ってる「最終話」ですが、実は目処が付いたのはいいものの、ちょっとした1冊の本になるぐらいの分量になってまして。
どうも、Web公開する分量にしてはキツイかな、という感じです。
とはいえ、個人での鉄道イベントの参加は終了となっておりますので、どうしたものかと悩んでおります。
よろしければ、拍手を利用した簡易アンケートにご協力いただけると幸いです。
以下の項目について、一番ご希望に近いものを拍手のコメント欄でお知らせいただければ幸いです。
1.長くても構わないのでWeb公開希望
2.製本化して頒布希望(完全受注制)
2-1.鉄擬ジャンルならば立ち寄る
2-2.鉄擬ジャンルと同日イベントならば、別ジャンルでも立ち寄る
2-3.別日、別ジャンルでも立ち寄る(夏コミ)
ご注意:2-1、2-2に関しては、現状で当てがあるわけではありません。
確実に何とかなる(はずな)のは、1と2-3です。
ご意見いただけると、いろいろ反映出来るかも知れません。
よろしければ、ご協力くださいませ。
1.長くても構わないのでWeb公開希望
2.製本化して頒布希望(完全受注制)
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2-2.鉄擬ジャンルと同日イベントならば、別ジャンルでも立ち寄る
2-3.別日、別ジャンルでも立ち寄る(夏コミ)
ご注意:2-1、2-2に関しては、現状で当てがあるわけではありません。
確実に何とかなる(はずな)のは、1と2-3です。
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・・・→ 本文
――― それは、雨が引き寄せた偶然だったはず。
いや、本当に偶然だったのだろうか――― ?
乗客の流れが落ち着いた頃合いを見計らって、副都心は池袋駅へとやって来た。
朝のラッシュさえ無事にやり過ごしてしまえば、さほど忙しいとは言えない。
何気なく行き交う車両を眺めていた副都心は、地上からやって来た上り車両が濡れていることに気付いた。
ふと思い付いて周囲を見渡してみれば、ホームにいる乗客達の大半が傘を手にしている。
ずっと地下にいたので気付かなかったが、どうやら地上では雨が降り出しているらしい。
改札近くの階段を上って地上へと出てみると、やはり弱い雨が降っていた。
天気予報で告知でもされていたのか、行き交う人々にはあまり慌てた気配は感じられない。
ゲリラ雷雨や台風の時期ならともかく、地下鉄である副都心には天気予報をまめに確認する習慣が無かった。
そのため傘を持って来なかったのだが、いざとなれば傘ぐらいコンビニエンスストアで買える。
いつ無くしてもいいような、気楽に使えるビニール傘が。
――― いつ無くしてもいいはずの気軽に使えるビニール傘を、自分は使い続けているのだけれど。
地下へ降りて休憩室に向かおうとした副都心は、ふと思い付いたようにそのまま西武池袋の担当エリアへと足を向けた。
多少の雨が降ってきたところで地下鉄である自分には問題ないが、地上を走る池袋はどうだろうか。
仕事上、関わりのある自分がそれを気に掛けてもおかしくはないはずだ。
そう思い、副都心は西武線の改札の外からホームの様子を伺ってみたが、池袋の特徴的なコート姿を見つけることは出来なかった。
都内有数のターミナル駅とは言え、彼も池袋駅だけに関わっていられないのだろう。
――― 挨拶すべき相手がいないのでは、仕方が無い。
改めて出直そうと自分の駅構内へと戻った副都心は、見慣れた姿に足を止めた。
「……池袋さん? どうされたんですか? たった今、そちらのご様子を窺いに行ったところですが」
背後へ軽く両腕を回しながら、池袋はホームから階段を上がってくるところだった。
階段の上部から掛けられた副都心の言葉に、池袋はゆっくりと顔を上げる。
「どうしたは、こっちの台詞だ。……何か私に用でもあったのか?」
怪訝そうな表情ではあるが、何処か心配そうな気配を含ませている池袋へ、副都心は作り慣れた笑みを向けた。
「いえ、特に急用というわけでもなかったのですが、雨が降ってきたようなのでどうされているかと思いまして」
「……心配されるような大雨ではない。むしろ、お前の方が問題だろう」
運行に支障が生じるような用事ではないと察して、池袋は警戒を解いたようだ。
「問題、ですか? 僕は地下を走るだけですから、天候にはあまり左右されませんよ。それこそ、僕が影響を受けるほどでしたら、池袋さん達の方がもっと大変なことになっているでしょう?」
「お前たちは私たちと違って脆弱だからな。こちらに問題が無くとも、些細なことでトラブルを引き起こしかねん」
軽い笑みさえ浮かべているので、恐らく機嫌は悪くない。
だから、つい。
「――― そんなに心配ですか?」
そんな風に問い掛けたのは、副都心のちょっとした悪戯心だ。
少しでも池袋が動揺しないだろうかと、そんな期待をしたから。
だが、池袋はあっさりと切り返してきた。
「心配されたいのか?」
池袋にとって、副都心は気を惹こうとする子供と同じようなもの。
あながち、それも間違っていないのかも知れないが。
「いつまでもご心配お掛けして、申し訳ありません」
「……全く、謝罪の言葉ばかりが上手くなるな」
淀みなく告げる副都心の言葉に、池袋は呆れたような溜息を付いた。
「それも成長だと思っていただければ」
心配を掛けることで彼の気を惹けるというのなら、それも悪いことではない。
勿論、業務としては問題となるような事はまずいが。
「――― しかし、雨ですか。帰りまでには止んでほしいですね。僕、傘持ってこなかったんですよ」
「天気予報は見て来なかったのか? 今日は降ると昨夜から言っていたぞ」
話を切り換えるような副都心の言葉に、池袋は怪訝そうな視線を向けてきた。
たかが天気と言えども、地上を走る池袋にしてみれば重要な情報。
それを自分には関係が無いなどという態度を取られれば、不快に思ってもおかしくない。
どう答えたものかと迷ったが、副都心は直接返事をせず、黙って肩を竦めるに留めた。
その態度に池袋は少しだけ呆れたような吐息を付いたが、それ以上の文句を言うつもりはないようだ。
これまでの副都心の行動を思えば、わざわざ腹を立てるほどのことでもない、というのが正解か。
「……雨は嫌いなのか?」
思いも寄らぬ問い掛けに、咄嗟に返答しかねた副都心の沈黙をどう解釈したのか、池袋はすぐに面白くもなさそうに言葉を継いだ。
「まあ、雨が好きだというヤツはいないか」
「――― いえ、僕は嫌いじゃないです」
嘘ではない。
ただ、その意味が正確に伝わるとも思わないが。
意外な返答だったのか、池袋は驚いた様子を隠さずに副都心を見返してくる。
「あれ、そんなに驚きます? 先入観は禁物ですよ」
副都心が笑みを深めて見返すと、池袋はさり気なく視線を逸らした。
「……ああ、地下鉄には雨など関係ないのだったな」
「そこまで言い切りませんよ。少なくとも運行トラブルより面倒ですね。ラッシュ時に濡れた傘とか、不快じゃないですか」
あっさりと応じた副都心の言葉に、池袋は微かに眉を顰める。
「不快ならば嫌い、と言うことになるんじゃないのか?」
「そうとは限りませんね。まあ、乗客は嫌いかも知れませんが」
「お前自身はどうなんだ?」
予想外の答えに興味を持ったのか、池袋は真っ直ぐに副都心を見返してきた。
「別に、僕がラッシュの車両に乗るわけではありませんので」
「……自分に直接関わらなければどうでもいい、か。嫌いじゃないだけで別に好きでもない、と?」
「いえ、わりと好きですよ」
躊躇いなく、淀みなく、いつもの軽い笑みと共に。
のらりくらりとした副都心の返答に、池袋は一瞬困惑したような表情を見せたのもも、そのまま軽く肩を竦めて沈黙してしまった。
「……アレ、理由を聞いてくれないんですか?」
惑わせるために答えていたわけではない。
どうせなら、最後まで話を聞いてもらいたいところだが。
「その場限りの適当な答えを聞いても仕方が無い」
「そういうやりとりも意外と楽しいかも知れませんよ。そもそも適当に答えていたと思われたなら、僕も不本意なんですけど」
笑みながら副都心がそう答えると、池袋は律儀にも問い返してきた。
「……で、誰が楽しいんだ?」
「ああ、それは僕が楽しいのですが」
込み上げてくる笑みを押し殺しながら応じる副都心に、やはりきちんと言葉を返してくる。
「……なら、私が聞いても仕方が無いな」
「楽しい方が良いじゃありませんか?」
特に意味を含ませた訳ではなかったのだが、池袋は一瞬、何かに引っかかったように言葉を詰まらせたかと思うと、静かに視線を逸らした。
「――― 楽しい? 仕事に楽しいなどということがあるか」
「アレ? 好きなら楽しいんじゃないですか。池袋さんは仕事が好きなのかと思いましたが」
本当に、素直にそう思っただけ。
だが思いも寄らず、彼を刺激してしまったらしい。
微かに表情を曇らせた池袋に、副都心は少し慌てて言葉を継いだ。
「池袋さんは何が楽しいですか?」
「……それを聞いてどうする」
「聞いてみたいだけです。純然たる好奇心です」
そう言いながら意図的な笑みを向けると、池袋は警戒を解いたように少しだけ肩の力を抜いた。
「お前の好奇心を満たしてやる義理は、私には無いはずだが?」
「義理ではありませんが、サービスの一環ということで如何ですか?」
気になるから、知りたい。
理由なんて、全部後付。
解らないからこそ、答えを求めずにはいられないのだから。
「子供の好奇心か……。ならば、仕方が無いな」
自覚があるのか、無いのか。
子供相手となると甘くなりがちな池袋は、穏やかな笑みを浮かべて静かに続けた。
「――― 私にも、それなりに楽しく思うものはある」
「やっぱり仕事ですか?」
いつもの軽口のつもりだった。
だけど。
「それしかないだろう、私には」
笑って聞き流すには少しばかり重すぎる言葉に、副都心はどう返せばいいのだろうか。
「……他にも何かあった方が良くありませんか?」
もっと上手く、軽く切り返すことが出来れば良かったのに。
「そうだな。考えておこう」
上辺の笑みを作ることなく、池袋は表情を消したまま静かに答えるから。
「……雨、止まないみたいですね」
逃れるように池袋から視線を逸らし、副都心はホームへと降りてきた乗客達の持つ濡れ細った傘を見つめながら呟いた。
こんな時、自分は上手く対処できない。
「誰か」のように、上手く切り換えることも、聞き流すことも出来ない。
こうして自分の都合の悪いことから視線を背けるだけ。
まるで、池袋自身のように――― 。
返すべき言葉を見失って黙り込んだ副都心は、ふと池袋の動く気配に顔を上げた。
目の前に差し出されたのは、一本の傘。
先ほどから両手を背後に回していたのは、これを持っていたからか。
「え?」
「持って来ていないんだろう?」
「ええ。でも……」
傘と言っても、コンビニエンスストアにあるようなビニール傘とは違う。
デパートで売っているようなしっかりした大判のもの。
「いつまでもコンビニのビニール傘では、みっともないだろう」
確かに、副都心がいつも使っているのはビニール傘だ。
使い捨てされることを想定されたような、素っ気ない透明な傘。
いつ無くしても構わないはずなのに、今までずっと使い続けてきた傘。
――― 何故なら、あの傘は。
「返す必要は無いぞ」
「それでは頂いてしまうことになりますが?」
副都心の困惑に満足したのか、池袋は少しだけ意地の悪そうな笑みを見せた。
「まあ、何とかまともに運行できるようになった子供には大きすぎるかも知れんが」
「……子供扱いですか?」
「子供扱いではなく、子供だろう?」
池袋が副都心を子供扱いするのは、今に始まったことではない。
それを不服に思わないわけではないけれど。
相手の意図を、自分の都合のいいように解釈しているのかも知れないけれど。
――― それでも。
浮かぶ笑みを自分で押さえきれないのなら、それも一つの正解としても構わないだろう。
「まあ誕生日には少し早いですが、プレゼントだと思うことにしますよ」
冗談半分、本音半分の言葉だったが、予想に反して池袋は黙ったまま背を向けて歩き出した。
――― まさか、もしかして?
問い掛けたところで、答えが返ってくるはずがない。
だけど。
「ありがとうございます、池袋さん」
副都心が静かにそう言うと、池袋は立ち止まって肩越しに振り返った。
「礼などいらん。以前の借りを返しただけだ」
「……借り、ですか?」
副都心が返された言葉へ反射的に首を傾げると、池袋はその口元に微かな笑みを浮かべる。
「――― さあ、いつまでも油を売ってるんじゃない。さっさと仕事に戻れ。私たちに迷惑を掛けるようなら容赦ないぞ」
そう言い残して、池袋は立ち去って行った。
彼の行動にどんな意味があるのか、それとも無いのか。
今の自分にはよく解らない。
だけど――― 。
副都心は手にした傘を軽く握り直した。
――― あの雨に引き寄せられたのは偶然だったのか、それとも。
何であったとしても、構わない。
あの雨が、きっかけだった事実に変わりはないから。
「――― 僕は好きですよ、雨も」
届くはずのない言葉を、副都心はぽつりと呟いた。
the END
☆
The Last up_date 2012.03.26
★……まあ、お察しの通り、何回目かのお誕生日ネタだったわけです。
さすがにこの時期に「お誕生日!」とは言えないので、微妙に改変しました(^^;;。
日頃から「有池前提!」と公言しているわけですが、これだけ見ると完全に副池だったりするのは私の気のせいでしょうか……。
副都心にしろ池袋さんにしろ、キャラ改変が著しいのは今に始まった訳ではありませんので、ご了承ください(苦笑)。
いや、本当に偶然だったのだろうか――― ?
乗客の流れが落ち着いた頃合いを見計らって、副都心は池袋駅へとやって来た。
朝のラッシュさえ無事にやり過ごしてしまえば、さほど忙しいとは言えない。
何気なく行き交う車両を眺めていた副都心は、地上からやって来た上り車両が濡れていることに気付いた。
ふと思い付いて周囲を見渡してみれば、ホームにいる乗客達の大半が傘を手にしている。
ずっと地下にいたので気付かなかったが、どうやら地上では雨が降り出しているらしい。
改札近くの階段を上って地上へと出てみると、やはり弱い雨が降っていた。
天気予報で告知でもされていたのか、行き交う人々にはあまり慌てた気配は感じられない。
ゲリラ雷雨や台風の時期ならともかく、地下鉄である副都心には天気予報をまめに確認する習慣が無かった。
そのため傘を持って来なかったのだが、いざとなれば傘ぐらいコンビニエンスストアで買える。
いつ無くしてもいいような、気楽に使えるビニール傘が。
――― いつ無くしてもいいはずの気軽に使えるビニール傘を、自分は使い続けているのだけれど。
地下へ降りて休憩室に向かおうとした副都心は、ふと思い付いたようにそのまま西武池袋の担当エリアへと足を向けた。
多少の雨が降ってきたところで地下鉄である自分には問題ないが、地上を走る池袋はどうだろうか。
仕事上、関わりのある自分がそれを気に掛けてもおかしくはないはずだ。
そう思い、副都心は西武線の改札の外からホームの様子を伺ってみたが、池袋の特徴的なコート姿を見つけることは出来なかった。
都内有数のターミナル駅とは言え、彼も池袋駅だけに関わっていられないのだろう。
――― 挨拶すべき相手がいないのでは、仕方が無い。
改めて出直そうと自分の駅構内へと戻った副都心は、見慣れた姿に足を止めた。
「……池袋さん? どうされたんですか? たった今、そちらのご様子を窺いに行ったところですが」
背後へ軽く両腕を回しながら、池袋はホームから階段を上がってくるところだった。
階段の上部から掛けられた副都心の言葉に、池袋はゆっくりと顔を上げる。
「どうしたは、こっちの台詞だ。……何か私に用でもあったのか?」
怪訝そうな表情ではあるが、何処か心配そうな気配を含ませている池袋へ、副都心は作り慣れた笑みを向けた。
「いえ、特に急用というわけでもなかったのですが、雨が降ってきたようなのでどうされているかと思いまして」
「……心配されるような大雨ではない。むしろ、お前の方が問題だろう」
運行に支障が生じるような用事ではないと察して、池袋は警戒を解いたようだ。
「問題、ですか? 僕は地下を走るだけですから、天候にはあまり左右されませんよ。それこそ、僕が影響を受けるほどでしたら、池袋さん達の方がもっと大変なことになっているでしょう?」
「お前たちは私たちと違って脆弱だからな。こちらに問題が無くとも、些細なことでトラブルを引き起こしかねん」
軽い笑みさえ浮かべているので、恐らく機嫌は悪くない。
だから、つい。
「――― そんなに心配ですか?」
そんな風に問い掛けたのは、副都心のちょっとした悪戯心だ。
少しでも池袋が動揺しないだろうかと、そんな期待をしたから。
だが、池袋はあっさりと切り返してきた。
「心配されたいのか?」
池袋にとって、副都心は気を惹こうとする子供と同じようなもの。
あながち、それも間違っていないのかも知れないが。
「いつまでもご心配お掛けして、申し訳ありません」
「……全く、謝罪の言葉ばかりが上手くなるな」
淀みなく告げる副都心の言葉に、池袋は呆れたような溜息を付いた。
「それも成長だと思っていただければ」
心配を掛けることで彼の気を惹けるというのなら、それも悪いことではない。
勿論、業務としては問題となるような事はまずいが。
「――― しかし、雨ですか。帰りまでには止んでほしいですね。僕、傘持ってこなかったんですよ」
「天気予報は見て来なかったのか? 今日は降ると昨夜から言っていたぞ」
話を切り換えるような副都心の言葉に、池袋は怪訝そうな視線を向けてきた。
たかが天気と言えども、地上を走る池袋にしてみれば重要な情報。
それを自分には関係が無いなどという態度を取られれば、不快に思ってもおかしくない。
どう答えたものかと迷ったが、副都心は直接返事をせず、黙って肩を竦めるに留めた。
その態度に池袋は少しだけ呆れたような吐息を付いたが、それ以上の文句を言うつもりはないようだ。
これまでの副都心の行動を思えば、わざわざ腹を立てるほどのことでもない、というのが正解か。
「……雨は嫌いなのか?」
思いも寄らぬ問い掛けに、咄嗟に返答しかねた副都心の沈黙をどう解釈したのか、池袋はすぐに面白くもなさそうに言葉を継いだ。
「まあ、雨が好きだというヤツはいないか」
「――― いえ、僕は嫌いじゃないです」
嘘ではない。
ただ、その意味が正確に伝わるとも思わないが。
意外な返答だったのか、池袋は驚いた様子を隠さずに副都心を見返してくる。
「あれ、そんなに驚きます? 先入観は禁物ですよ」
副都心が笑みを深めて見返すと、池袋はさり気なく視線を逸らした。
「……ああ、地下鉄には雨など関係ないのだったな」
「そこまで言い切りませんよ。少なくとも運行トラブルより面倒ですね。ラッシュ時に濡れた傘とか、不快じゃないですか」
あっさりと応じた副都心の言葉に、池袋は微かに眉を顰める。
「不快ならば嫌い、と言うことになるんじゃないのか?」
「そうとは限りませんね。まあ、乗客は嫌いかも知れませんが」
「お前自身はどうなんだ?」
予想外の答えに興味を持ったのか、池袋は真っ直ぐに副都心を見返してきた。
「別に、僕がラッシュの車両に乗るわけではありませんので」
「……自分に直接関わらなければどうでもいい、か。嫌いじゃないだけで別に好きでもない、と?」
「いえ、わりと好きですよ」
躊躇いなく、淀みなく、いつもの軽い笑みと共に。
のらりくらりとした副都心の返答に、池袋は一瞬困惑したような表情を見せたのもも、そのまま軽く肩を竦めて沈黙してしまった。
「……アレ、理由を聞いてくれないんですか?」
惑わせるために答えていたわけではない。
どうせなら、最後まで話を聞いてもらいたいところだが。
「その場限りの適当な答えを聞いても仕方が無い」
「そういうやりとりも意外と楽しいかも知れませんよ。そもそも適当に答えていたと思われたなら、僕も不本意なんですけど」
笑みながら副都心がそう答えると、池袋は律儀にも問い返してきた。
「……で、誰が楽しいんだ?」
「ああ、それは僕が楽しいのですが」
込み上げてくる笑みを押し殺しながら応じる副都心に、やはりきちんと言葉を返してくる。
「……なら、私が聞いても仕方が無いな」
「楽しい方が良いじゃありませんか?」
特に意味を含ませた訳ではなかったのだが、池袋は一瞬、何かに引っかかったように言葉を詰まらせたかと思うと、静かに視線を逸らした。
「――― 楽しい? 仕事に楽しいなどということがあるか」
「アレ? 好きなら楽しいんじゃないですか。池袋さんは仕事が好きなのかと思いましたが」
本当に、素直にそう思っただけ。
だが思いも寄らず、彼を刺激してしまったらしい。
微かに表情を曇らせた池袋に、副都心は少し慌てて言葉を継いだ。
「池袋さんは何が楽しいですか?」
「……それを聞いてどうする」
「聞いてみたいだけです。純然たる好奇心です」
そう言いながら意図的な笑みを向けると、池袋は警戒を解いたように少しだけ肩の力を抜いた。
「お前の好奇心を満たしてやる義理は、私には無いはずだが?」
「義理ではありませんが、サービスの一環ということで如何ですか?」
気になるから、知りたい。
理由なんて、全部後付。
解らないからこそ、答えを求めずにはいられないのだから。
「子供の好奇心か……。ならば、仕方が無いな」
自覚があるのか、無いのか。
子供相手となると甘くなりがちな池袋は、穏やかな笑みを浮かべて静かに続けた。
「――― 私にも、それなりに楽しく思うものはある」
「やっぱり仕事ですか?」
いつもの軽口のつもりだった。
だけど。
「それしかないだろう、私には」
笑って聞き流すには少しばかり重すぎる言葉に、副都心はどう返せばいいのだろうか。
「……他にも何かあった方が良くありませんか?」
もっと上手く、軽く切り返すことが出来れば良かったのに。
「そうだな。考えておこう」
上辺の笑みを作ることなく、池袋は表情を消したまま静かに答えるから。
「……雨、止まないみたいですね」
逃れるように池袋から視線を逸らし、副都心はホームへと降りてきた乗客達の持つ濡れ細った傘を見つめながら呟いた。
こんな時、自分は上手く対処できない。
「誰か」のように、上手く切り換えることも、聞き流すことも出来ない。
こうして自分の都合の悪いことから視線を背けるだけ。
まるで、池袋自身のように――― 。
返すべき言葉を見失って黙り込んだ副都心は、ふと池袋の動く気配に顔を上げた。
目の前に差し出されたのは、一本の傘。
先ほどから両手を背後に回していたのは、これを持っていたからか。
「え?」
「持って来ていないんだろう?」
「ええ。でも……」
傘と言っても、コンビニエンスストアにあるようなビニール傘とは違う。
デパートで売っているようなしっかりした大判のもの。
「いつまでもコンビニのビニール傘では、みっともないだろう」
確かに、副都心がいつも使っているのはビニール傘だ。
使い捨てされることを想定されたような、素っ気ない透明な傘。
いつ無くしても構わないはずなのに、今までずっと使い続けてきた傘。
――― 何故なら、あの傘は。
「返す必要は無いぞ」
「それでは頂いてしまうことになりますが?」
副都心の困惑に満足したのか、池袋は少しだけ意地の悪そうな笑みを見せた。
「まあ、何とかまともに運行できるようになった子供には大きすぎるかも知れんが」
「……子供扱いですか?」
「子供扱いではなく、子供だろう?」
池袋が副都心を子供扱いするのは、今に始まったことではない。
それを不服に思わないわけではないけれど。
相手の意図を、自分の都合のいいように解釈しているのかも知れないけれど。
――― それでも。
浮かぶ笑みを自分で押さえきれないのなら、それも一つの正解としても構わないだろう。
「まあ誕生日には少し早いですが、プレゼントだと思うことにしますよ」
冗談半分、本音半分の言葉だったが、予想に反して池袋は黙ったまま背を向けて歩き出した。
――― まさか、もしかして?
問い掛けたところで、答えが返ってくるはずがない。
だけど。
「ありがとうございます、池袋さん」
副都心が静かにそう言うと、池袋は立ち止まって肩越しに振り返った。
「礼などいらん。以前の借りを返しただけだ」
「……借り、ですか?」
副都心が返された言葉へ反射的に首を傾げると、池袋はその口元に微かな笑みを浮かべる。
「――― さあ、いつまでも油を売ってるんじゃない。さっさと仕事に戻れ。私たちに迷惑を掛けるようなら容赦ないぞ」
そう言い残して、池袋は立ち去って行った。
彼の行動にどんな意味があるのか、それとも無いのか。
今の自分にはよく解らない。
だけど――― 。
副都心は手にした傘を軽く握り直した。
――― あの雨に引き寄せられたのは偶然だったのか、それとも。
何であったとしても、構わない。
あの雨が、きっかけだった事実に変わりはないから。
「――― 僕は好きですよ、雨も」
届くはずのない言葉を、副都心はぽつりと呟いた。
the END
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The Last up_date 2012.03.26
★……まあ、お察しの通り、何回目かのお誕生日ネタだったわけです。
さすがにこの時期に「お誕生日!」とは言えないので、微妙に改変しました(^^;;。
日頃から「有池前提!」と公言しているわけですが、これだけ見ると完全に副池だったりするのは私の気のせいでしょうか……。
副都心にしろ池袋さんにしろ、キャラ改変が著しいのは今に始まった訳ではありませんので、ご了承ください(苦笑)。
葵的に積み上げた作業が一段落したところで、以前から予定していた話を書き始めようとしたら、プロット紛失。
いや、確かに、かなりの段階まで組んであったんですよ、マジでマジで!
なのに、いくら探しても見つからず……。
あちらこちらとHDDを漁ったら、今度は未着手のプロットが出てくる出てくる……。
仕方が無いので、とりあえず最初からプロット作り直したら……アレ?
こんな長かった? こんなにアレだった?(アレって何!)
そんなわけで、一応、完成の目処は付いたのですが。
どうやって公開すべきか、ちょっと悩んでおります。
サイトで分割して公開すると、ちょっと主旨がぶれてきそうな展開なので一気に上げるべきなのでしょうが、如何せん長い。
分割掲載の場合はそれを前提にプロット組むんですが、それなりに書き直すかどうか、ちょいとばかり悩んでおります。
とはいえ、もう鉄道でのイベント参加は出来ないので、ペーパーで配布というわけにも……。
イベントにはたまに他ジャンルで出没するんですけど、そちらで配布したところで需要があるわけもなく(^^;;。
唸りつつ、とりあえず積んであったプロットを完成させてみました(笑)。
とは言っても、積んであったのには理由があるわけでして。
実は今まで書いてきた設定とのすりあわせが出来ておりません。
本来ならそこを調整してから書くわけですが、今回はそもそもお蔵になってしまうところだった救済処置と言うことで、あまり細かい設定の一致にこだわらずに書いてみました。
パラレルっぽく楽しんで頂けたなら嬉しいです。
そう言うわけで、公開するつもりだったヤツをどういう形で公開しようか悩みつつ、もう少し手を入れようと思ってます。
その間、お蔵入りされるところだった小話ももう少し救出出来たらいいなぁ、とか思いつつ。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
いや、確かに、かなりの段階まで組んであったんですよ、マジでマジで!
なのに、いくら探しても見つからず……。
あちらこちらとHDDを漁ったら、今度は未着手のプロットが出てくる出てくる……。
仕方が無いので、とりあえず最初からプロット作り直したら……アレ?
こんな長かった? こんなにアレだった?(アレって何!)
そんなわけで、一応、完成の目処は付いたのですが。
どうやって公開すべきか、ちょっと悩んでおります。
サイトで分割して公開すると、ちょっと主旨がぶれてきそうな展開なので一気に上げるべきなのでしょうが、如何せん長い。
分割掲載の場合はそれを前提にプロット組むんですが、それなりに書き直すかどうか、ちょいとばかり悩んでおります。
とはいえ、もう鉄道でのイベント参加は出来ないので、ペーパーで配布というわけにも……。
イベントにはたまに他ジャンルで出没するんですけど、そちらで配布したところで需要があるわけもなく(^^;;。
唸りつつ、とりあえず積んであったプロットを完成させてみました(笑)。
とは言っても、積んであったのには理由があるわけでして。
実は今まで書いてきた設定とのすりあわせが出来ておりません。
本来ならそこを調整してから書くわけですが、今回はそもそもお蔵になってしまうところだった救済処置と言うことで、あまり細かい設定の一致にこだわらずに書いてみました。
パラレルっぽく楽しんで頂けたなら嬉しいです。
そう言うわけで、公開するつもりだったヤツをどういう形で公開しようか悩みつつ、もう少し手を入れようと思ってます。
その間、お蔵入りされるところだった小話ももう少し救出出来たらいいなぁ、とか思いつつ。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

